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実用新案とは?

実用新案とは、新規で有益な考案について実用新案法に基づいて一定期間独占権を付与することをいいます。

実用新案法に基づいて一定期間独占権を得るためには、
(1)実用新案法の保護対象たる考案について、
(2)特許庁に適式な出願を書面で行い、
(3)所定の料金を特許庁に納付する
ことが必要です。

【対象】
実用新案法の保護対象は「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」です。
このうち、「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいいます。
特許法と異なるのは、保護対象が物品の形状、構造又は組合せに係る考案に限られることと、特許法ほどは創作の高度性を求められていないことです。
たとえば、歯ブラシやせっけんのような日用品、テレビや自動車などの電気・機械製品は、実用新案法の保護対象になりますが、化学物質そのものは、「物品の形状、構造又は組み合わせ」に該当しないため実用新案法の保護対象になりません。
特許法と同様、金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや、計算方法・暗号など、自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。
発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は、技術的思想の創作ではありませんから、保護の対象とはなりません。

【出願書類】
実用新案登録出願は、書面により、決められた書式で行うよう求められています。
具体的には、(1)願書、(2)実用新案登録請求の範囲、(3)明細書、(4)図面、および(5)要約書、を提出する必要があります。
(1)願書
実用新案登録出願の意思表示をするとともに、出願人や考案者などを表示するための書面です。
(2)実用新案登録請求の範囲
出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定するために必要と認める事項を記載する書面です。
実用新案登録請求の範囲の記載によって特定される考案が、独占権の対象となります。従って、実用新案登録請求の範囲の記載は、大変重要になります。
(3)明細書
実用新案登録請求の範囲に記載した考案を第三者が実施できるように十分に詳細に説明するための書面です。
また、実用新案登録請求の範囲に記載した考案の解説欄的な役割を果たすための書面でもあります。
実用新案法は、新規で有用な考案の公開に対する代償として一定期間独占権を付与することにより、産業の発達に寄与することを目的としていますので、実用新案登録を受けようとする考案を十分に開示する必要があります。そのために、明細書で、実用新案登録請求の範囲に記載した考案を十分に開示する必要があります。
また、実用新案登録請求の範囲に記載する文章は、簡潔であることが求められており、実用新案登録請求の範囲だけでは、実用新案法の保護を受けようとする考案が分かりにくいこともあります。そのため、実用新案登録請求の範囲に記載した考案をより分かりやすく説明することが明細書に求められています。
(4)図面
実用新案法の保護対象は、日用品や機械製品など、目に見える物品であることから、図面は必須書類となっています。
(5)要約書
実用新案登録を受けようとする考案の内容を簡潔に記載した書面であり、実用新案登録出願の内容を容易に知ることのできる技術情報としての役割を有しています。

【登録要件】
【無審査登録制度】
実用新案法は、一定の形式的要件を満たせば、実体的な登録要件を審査することなく、実用新案登録する無審査登録制度を採用しています。これにより、特許権を取得する場合と比べて、より早期に実用新案権を取得することができます。
ただし、権利が有効であるためには、実体的な登録要件を備えていることが必要です。主な登録要件としては、
(1)新規性を有している(世の中に同一考案が知られていない)こと
(2)進歩性を有している(世の中で知られている考案から極めて容易に思いつかない)こと
(3)同一考案について最も先に出願していること
が必要です。

【登録の効果】
実用新案登録請求の範囲に記載の考案を、一定期間独占的に実施(製造・販売等)できます。
登録実用新案と同一または実質的に同一な考案を、正当な権原なき第三者が業として実施した場合には、差し止め請求や、損害賠償請求を行うことができます。
ただし、特許権と異なり、実体的要件を審査することなく設定登録された権利であるため、権利行使に当たっては、特許権を行使する場合よりも、制限が課されています。
具体的には、実用新案技術評価書と呼ばれる書面を相手方に提示して警告した後でなければ、権利行使をすることができません。実用新案技術評価書は、実用新案登録の有効性に関して特許庁が判断する鑑定的な書面です。
実用新案権を行使した後に実用新案登録が無効になった場合には、権利行使した相手方に損害賠償しなければならない場合があります。
なお、一定期間内であれば、実用新案登録に基づく特許出願を行い、より安定した権利としての特許権を取得し、権利行使することも考えられます。

【存続期間】
実用新案権は、設定登録により発生し、実用新案登録出願の日から10年で消滅します。

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*上記各項目に記載の知財解説は、一般的情報です。
個別案件に対するプロフェッショナルのアドバイスは、弁理士までお気軽にお問い合わせください。
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