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中国・商標法の第三次改正について

かねてより早期の成立が望まれていた、中国商標法の改正法案が本年8月30日に全人代常務委員会を通過致しました。2014年5月1日より、新商標法が施行されます。

商標法と一体的に運用され、法律の具体的内容を定めることになる「商標法実施条例」は、これから作成作業に入ります。来年2月~3月ごろにはこの実施条例が出来上がるのではないかと言われております。

今般の法改正の主要な内容は以下の通りです。全般的に正当な商標主の保護を厚くする方向に改正がされます。中国で抜け駆け登録の被害に遭われている日本企業の方々にとって朗報といえます。


1.音商標の導入(新法8条)

非伝統的商標のうち、色の組み合わせ、立体商標はすでに導入済みですが、これに加え、音の商標が新たに導入されることになりました。

しかしながら、以前公表された素案にあった「単色の色商標」の導入は見送られました。

2.一出願多区分制の導入(新法22条)

現在のように区分ごとに出願や登録を管理する必要がなくなり、管理が一元化できるので、出願人の方にとって利便性が増します。
また、公的費用や代理人費用が安くなることも予想されます。

3.意見聴取制度の導入(新法29条)

審査途上で、商標局が、出願人に出願内容の説明や補正を求めることができることになりました。しかしながら、「できる」と規定され商標局の裁量に任されている内容となっており、日本風の拒絶理由通知・意見書と似た内容になるかどうかはやや不透明です。

4.先使用権の導入(新法59条)

今まで認められてこなかった先使用権が認められることになりました。
商標権者が商標を出願する前に、他人が、同一・類似の商品について商標権者より先に登録商標と同一・類似の商標を使用し、かつ、その使用商標が中国において一定の影響力を有していれば(ある程度有名であれば)、その他人は先使用権を有し、商標権者に対抗することができる(権利侵害にならない)ようになります。
中国で使用していた未登録商標を、中国企業に先駆け的に登録されてしまったような場合に、先使用権があれば非常に助かります。

5.審査期限の規定(新法28条など)

出願の審査期限を、出願から原則9ヶ月とすることが明記されました。その他、異議や審判等の審理期間についても明記されました。

6.異議申立制度(新法33条、34条)

異議申立人の主体的要件が「何人も」から「先行権利者、利害関係者」等に厳格化されました。
異議申立が認められなかった場合、異議申立人は異議決定につき不服審判を請求することができないようになります。一方、異議申立が認められ、拒絶処分がされた場合、従来どおり、出願人は異議決定につき不服審判を請求することができます。

7.冒認的出願対策の強化(新法15条)

業務提携その他の関係により、他人の商標が先に使用されていることを明らかに知った上での冒認的な商標出願をすることを禁止する旨の規定が設けられました。

8.新たな不正競争行為の明記(新法58条)

他人の登録商標、未登録の馳名商標(日本でいう著名商標)を商号に使用する行為が、不正競争行為として明記されました。

9.商標権侵害行為の規定(新法57条)

直接、他人の商標専用権を侵害する行為をしていないが、他人の商標権を侵害する行為に荷担、協力している企業・個人に相応の責任を負わせることとなりました。

10.法定損害賠償額の引き上げ、懲罰的三倍賠償制度の導入(新法63条)

法定損害賠償額が50万元から300万元に引き上げられました。

悪意により商標権を侵害し、深刻な案件の場合には、権利者が侵害による受けた実際の損失、侵害者が侵害により得た利益、又は登録商標の使用許諾費用の1倍~3倍の賠償額を認定することが可能となりました。

11.商標権者の損害賠償請求時における使用義務明記(新法64条)

侵害訴訟を提起された被告が、登録商標が使用されていないと主張した場合、原告が過去3年以内の登録商標の使用証拠を提出することが裁判所から求められることになりました。

12.その他、馳名商標(日本でいう著名商標)の商業的使用の禁止(新法53条)など

(竹原)